「学ぶことは面白いか ?」 理数編
「数学や理科のない世界に行きたい」と思っている人もいるでしょう。今回は「数学」や「理科」の面白さについて考えてみます。
(サイエンス・ナビゲーター 桜井 進さんの『雪月花の数学』(祥伝社)を参考にしました。)
1「ダ・ヴィンチ・コード」にも登場する黄金比の数式
ほとんどの人が知っている「ミロのヴィーナス」像の「頭の先からへそまで」と「へそからつま先」までの長さは「5対8」です。つまり、「1対1.6」。
この比率を黄金比と言います。
映画「ダ・ヴィンチ・コード」の中で、主人公ロバート・ラングドン教授が「1.618」という数字を板書して、学生たちに黄金比を説明するシーンを覚えていますか。
「そう!」ラングドンは言った。「いい質問だ」スライドをもう一枚映す。黄ばんだ羊皮紙に、レオナルド・ダ・ヴィンチによる名高い男性裸体画が描かれている。・・・
「ダ・ヴィンチは人体の神聖な構造をだれよりもよく理解していた。実際に死体を掘り出して、骨格を正確に計測したこともある。人体を形作るさまざまな部分の関係がつねに黄金比を示すことを、はじめて実証した人間なんだよ。」教室内の全員が半信半疑の面持ちを見せた。
(『ダ・ヴィンチ・コード』越前敏弥・訳)
このとき、ラングドン教授は黄金比を導き出す一つの数列を紹介するのです。
それが、「フィボナッチ数列」と呼ばれる数列です。
「1」から始めて、次に「1」を置く。
「1」と「1」をたして、「2」。
「1」と「2」をたして、「3」。
「2」と「3」で「5」。
「3」と「5」で「8」。・・・・
と、隣り合う2項の和が次の項の値と等しくなる数列が「フィボナッチ数列」です。
1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144・・・
面白いのはここからです。
この数字を半径とする円の四分の一の円を順につなげていくと、どのような形になるのでしょうか。
実はらせんになります。
自然界には「らせん」の形をしたものがあふれています。
たとえば、アサガオのつる、DNA、銀河系・・・・など、実にいろいろなところに
「らせん」が存在するのです。
古代から人々が黄金比に森羅万象をつかさどる大自然のルールを見ていたのも、なるほどという気がしてきます。
2 葛飾北斎の版画にみる黄金比
江戸時代の代表的な浮世絵師、葛飾北斎の傑作の一つに、「神奈川沖浪裏」があります。
この絵の中に何と「黄金比」が使われていたというのです。遠くの富士山を包み込んで、今まさに崩れようとしている波がフィボナッチ数列から導き出された「らせん」の形にきわめて近いのです。
実は日本の美を象徴する数は、黄金比ではなくて、「白銀比」だということがよく知られています。
白銀比というのは、√2(√△という数字はそれを2回かけると、△になる大きさです)なのですが、法隆寺の五重塔の庇(ひさし)の最上層と最下層が1対√2がその代表格です。それ以外にも、法隆寺には金堂や西院伽藍などにもこの数字が見られます。
要するに、北斎以前の日本の伝統美は「白銀比」を基本としたものだったようですが、なぜか北斎は西洋式の「黄金比」を持ち込んだのです。実に不思議なことです。単なる偶然の一致でしょうか。
このようなお話は数学や理科がいかに現実の世界と関係が深いかを教えてくれます。
「数学」や「理科」は大嫌いだという人も、もう一度そんなところから見つめ直してみたらどうでしょう。退屈な授業だと思っていた「数学」「理科」に興味が湧いてくるかもしれませんよ。
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